カメレオ:日本人起業家が変えるベトナムの食材調達
カメレオは元ピザ4P'sのCOO田中卓氏がベトナムで共同創業したB2B食材調達プラットフォーム。累計1,500万ドル超の資金調達と、日本資本がベトナムのF&Bを選ぶ理由を解説します。
執筆 Farmi編集部
Farmi Editorial Team
カメレオ(KAMEREO)は、ベトナムのレストランや飲食店、F&B企業に食材を届けるB2B(法人向け)の食材調達プラットフォームです。 元ピザ4P'sのCOOだった日本人起業家、田中卓氏が2018年に共同創業しました。市場でばらばらの仕入れ先に発注する代わりに、店は一つのアプリで注文し、カメレオ自前の倉庫から配送を受けられます。現在は3,000社を超える法人顧客を抱え、累計1,500万ドル超を調達。年平均で300%を超える売上成長を続けてきました。
カメレオの話は、一つのスタートアップの成功譚にとどまりません。日本の技術と資本が、ベトナムの食卓を支える「裏側」の仕組みを静かに作り替えつつある、その象徴でもあります。そして同じ「産地・温度管理・配送時間」という価値観は、ホーチミンで日本の食材を家庭に届ける私たち Farmi の考え方とも地続きです。
カメレオとは何か
カメレオは、ベトナム初の「テクノロジーを活用したB2B食材調達プラットフォーム」として知られています。わかりやすく言えば、法人向けの「オンライン業務用スーパー」です。レストラン、カフェ、ホテル、給食施設などが食材を注文し、現場まで届けてもらえます。
取り扱うのは野菜、肉、魚介、調味料など、厨房に欠かせない品目。特徴は、単に注文を仲介するだけでなく、3温度帯の倉庫とラストワンマイルの配送網を自社で運営している点にあります。これにより、品質・価格・配送時間という、ベトナムの従来型流通が苦手としてきた3点をコントロールできます。
共同創業者の田中卓氏は、クレディ・スイスで投資銀行業務に携わった後にベトナムへ渡り、人気チェーン「ピザ4P's」でCOO(最高執行責任者)を務めました(FedEx、創業手帳)。その後2018年にカメレオを立ち上げ、現在は同社のCEOを務めています。英語圏の報道で「CEO」と紹介されるのはこのカメレオでの役職で、ピザ4P's時代はCOOでした。厨房と飲食チェーンを運営した経験の中で、食材仕入れの不安定さを目の当たりにしたことが、起業の出発点になっています。
なぜベトナムの外食業界で注目されるのか
ホーチミン市でレストランを営むオーナーにとって、従来のやり方での仕入れには、おなじみの悩みがつきまといます。
- 品質と価格が仕入れ先ごとにばらつく。 コストの見通しが立てにくい。
- 遅配や誤配が起きる。 ピークタイムの厨房が止まってしまう。
- 仕入れ先が多すぎる。 野菜、肉、魚、調味料をそれぞれ別の業者とやり取りする必要がある。
カメレオはこれらを一つのプラットフォームに集約します。注文は一か所、請求書は一枚、配送窓口は一つ、価格は明示。利益率が薄く、厨房の安定運営に依存するF&B業界にとって、これは運営面での大きな変化です。
顧客層の広さも注目されます。飲食店だけでなく、スーパー、コンビニ、工場、学校、病院まで。その中にはミシュランのおすすめリストに載るレストランや、ソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイ、SOJOホテルズといった大型ホテル、ボンチョンやDOMOTOなどのF&Bチェーンも含まれます。
> プロの厨房が重視することは、家庭の台所でも同じです。 産地がはっきりして、冷蔵・冷凍で管理され、時間どおりに届く。ホーチミンで暮らす日本人のために、この「日本品質」を家庭向けに届けるのが Farmi のアプリです。App Store または Google Play からどうぞ。
資金調達と事業拡大の軌跡
カメレオの勢いは、資金の流れにはっきり表れています。その多くが日本の企業やファンドからのものです。
| 時期 | ラウンド | 金額 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2019年 | 初期ラウンド | 50万ドル | The Investor |
| 2021年 | シリーズA | 460万ドル | The Investor |
| 2024年4月 | プレシリーズB | 210万ドル | The Investor |
| 2024年12月 | シリーズB | 780万ドル | Nikkei Asia |
2024年12月に実施されたシリーズB(780万ドル)には、住友商事、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、Reazon Holdings に加え Inspire が参加しました。このラウンドで累計調達額は1,500万ドルを突破しています。
この資金は、ベトナム各地への展開、機能の追加、品目の拡充に使われます。2025年初めにはハノイへ進出し、最初の3か月で100社超の顧客を獲得。南北をつなぐ冷蔵輸送も運営し、中部やファンティエット、ブンタウなどの都市への展開も視野に入れています。
さらに注目したいのは、この調達後の方向性です。カメレオは単なる「供給者」から、マーケットプレイス型のモデルへと軸足を移しつつあります。GYOMU JAPANと提携し、業務スーパーの商品約450点をプラットフォームに載せる一方、自社ブランドも育てています。倉庫と配送網を握ったうえで、ほかの供給者を招き入れ、自社ブランドも持つ。インフラを作り直すことなく利益率を高められる、重要な一手です。
なぜ日本資本がベトナムのF&Bを選ぶのか
ここが、カメレオという事例を理解するうえでの核心です。住友商事や三菱UFJといった日本の大手が、厨房向けの食材配送スタートアップに資金を投じるのは偶然ではありません。日本の資本をベトナムの食卓へと引き寄せる、三つの力が働いています。
- 人口規模と伸びる購買力。 ベトナムは1億人を超える人口を抱え、中間層が拡大を続けています。だからこそ多くの日本企業が、ベトナムを食品・飲料の戦略的な進出先と見ています(Báo Đầu tư)。
- 消費者が品質により厳しくなっている。 所得が上がれば、食の安全や衛生への基準も上がります。産地・冷蔵管理・配送時間をコントロールできるプラットフォームは、その不安に正面から応えます(VnEconomy)。
- 「裏側」にまだ余地が大きい。 消費者は出前アプリに慣れましたが、厨房への食材供給網はいまだ分断されています。カメレオは自社が狙う食品流通市場の規模を約1,000億ドルと推計しており(これは外食向け小売市場ではなく、食品流通全体を見込んだ数字です)、テクノロジーと日本流のオペレーションを持ち込むプレイヤーにとって広い開拓地です。
興味深いのは、日本資本が流れ込む先です。華やかで目立つ消費者向け出前アプリではなく、倉庫・物流・厨房向けの仕入れという、人があまり見ない「裏方」に向かっています。カメレオへの出資とほぼ同時期に、住友商事はスーパー「Fuji Mart」の拡大も進め、2028年までに20店舗から50店舗へ増やす目標を掲げました。より広く見れば、日本はベトナムで5,630件超のFDI案件、登録資本79億ドル超を持ち、その資金は製造業から消費者向けサービスへと少しずつ移っています。
言い換えれば、日本の投資家は一つのスタートアップを買っているのではありません。より長期の流れに賭けているのです。より美味しく、より多くを求め、見えない工程の安定にもお金を払う、そんなベトナムに。
ホーチミンで暮らす私たちにとっての意味
カメレオは法人向け(B2B)のサービスで、一般家庭への小売は行っていません。ですが規模の違いをいったん脇に置くと、カメレオが提供している価値はとてもシンプルな原則に行き着きます。産地がはっきりしていること、きちんと冷蔵・冷凍で管理されること、時間どおりに届くこと。 この原則は、レストランの厨房だけでなく、食材の質を大切にするすべての人に当てはまります。
その「日本品質」の考え方を、ホーチミンの家庭向けに届けるのが Farmi です。日本の食材や輸入ブランドを中心に、調味料から生鮮食品までをアプリで注文でき、最短1時間で配送。アプリも配達員もカスタマーサポートも、日本語・英語・ベトナム語に対応しています。「どこの産地か」「きちんと冷蔵されているか」を気にせず買える安心感については、Farmiの品質と安心への取り組みもあわせてご覧ください([TODO: link khi publish 安心ガイド記事])。
ホーチミンで日本の食材を、日本語で、すぐに。App Store または Google Play からダウンロードできます。詳しくは farmi.vn。
よくある質問
カメレオは個人に小売販売していますか? いいえ。カメレオは法人顧客(レストラン、ホテル、学校、工場など)に特化しています。個人の方は、家庭向けの食材アプリ(Farmiなど)をご利用ください。
カメレオはどこの国の会社ですか? ベトナムで運営される会社で、日本人起業家の田中卓氏が共同創業し、投資家の多くが日本企業です。
カメレオは何を扱っていますか? 野菜、肉、魚介、調味料などF&B企業の厨房向け業務用食材に加え、マーケットプレイスの提携商品や自社ブランド商品です。
カメレオはどの地域で使えますか? 本拠地はホーチミン市で、2025年初めにハノイへ拡大、中部への進出も計画しています。
カメレオは、ベトナムの食が「食卓の上」だけでなく、その背後でデジタル化が進む「調達の仕組み」にも宿ることを、はっきり示す事例です。そして日本流のオペレーション基準が一つひとつの工程に入り込むほど、ベトナムの食卓は、レストランでも家庭の台所でも、少しだけ安心を増していきます。
参考リンク
- The Investor: Vietnam-based food sourcing startup Kamereo nets $7.8 mln in Series B funding
- The Investor: Japanese FDI in Vietnam: From manufacturing hub to strategic capital flows
- Vietcetera: KAMEREO Secures $7.8M Series B
- Vietcetera: KAMEREO Secures $2.1 Million Funding Boost(年平均300%成長の出典)
- Nikkei Asia: Vietnam e-commerce food supplier Kamereo secures $7.8m funding
- FedEx: This CEO Is Revolutionizing Vietnam's B2B Food Supply Chain
- TNGlobal: Vietnam's Kamereo expands to Hanoi
- Vietnam News: Japanese retail giants expand footprint in Vietnamese market
- NextBillion: Vietnam's Kamereo Secures $7.8M Series B Funding
- 創業手帳: KAMEREO 田中卓 インタビュー
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Farmi編集部
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